〜脳卒中の日記風〜
異状ヲ訴エル

 

「喉が痛い」
お医者さんの朝の回診の時に言った。
昨日までは何ともなかったのに、
急なことで原因がよく分からない。
口をアーンと開けると、
ちょっぴり喉の奥が赤いのでは?というぐらいだそうだ。
一応、念の為にうがいをする。
迂闊にも、風邪を引いてしまったのか?
だが、待てよ…
ひょっとして…
前日友人が面会に来た時に、
嬉しさのあまりしゃべり過ぎたのか?
それで、喉があれているだけじゃないのか?
2ヶ月分、溜まっていたものを一気にしゃべったような感じだったし…
それまでは、まるきり「しゃべる」ことをしていなかったし…
忘れた頃に、急に声を出し過ぎた?

健康な人が異状をきたすと、
痛みとかでスグ分かるけれど、
感覚が麻痺するという、より大きな異状だった自分自身が、
その回復過程で異状をきたすとよく分からない。
というか、いま起こった異状なのか分からない。
以前からあったけれど、麻痺していたので分からなかったとか。
とにかく自分の下した判断に自信が持てない。
健康だった時には考えもしなかったことだ。

そういえば、「右耳が変な感じがする」と言ったこともある。
昔、中耳炎を患ったことがよくあった。
今回も、そんな耳の奥がジンジンするような感じがする。
「別に何ともなってないけどなぁ」と看護婦さんに言われても。
でも…
時間が経つにつれて、
何だか違うような気もしてきたぞ。
ただの気のせいなのではないのか?
元々あるシビレではないのか?
そんな気がする。
昨日の耳はどうだったのか?
そんなこといっても、よく分からない。
こういうことがたまにある。

大きな異状からの回復途上の小さな異状。
これは案外、気付くことが難しいのかも。

目の方はゆっくりながら、回復している。
でも、まだまだ。
そう、通勤カバンの中に読みかけの本があるのを思い出した。
お医者さんから、本を読むことの「O.K.」は出ている。
(視覚を通しての文字の読み取りは、立派な脳への刺激だ!)
ただ、その本は新書本で文字が小さいのだ。
読み始める。
「あら!本を読めるようになったの!」
通りかかる人にそう言われ、その気になって読んでいたものの、
何しろ焦点が合わない。
いつのまにか隣りの行を読んでいたりする。
その繰り返し。
ダメだコリャ。

30分ぐらいで撤収。
いったい何頁読んだのか?