〜脳卒中の日記風〜
見付かってしまった！

看護婦さんが言いました。
「おしっこが分かるんだったら『はくパンツ』にしよ！」
答えは待たずに、オムツを脱がされ、パンツが登場。
「はくパンツ」とは、
紙オムツの素材でできたブリーフ型のパンツで、
オムツ程の吸水力はない。
つまり「おもらし」厳禁。
今まで以上に、緊張感あふれるものなのだ。
（禁を犯している人も、いっぱいいたケド…）
自分で自分の処理が必要。
ベットの柵の左側の左手の届くところに、
「シビン」の収まるカゴを取り付けてもらう。

「もしかしたら…」と不安に思う一方、
「これでわざわざ人を呼ぶ必要がなくなったわい」と安心もした。
そろそろかな？と思って構える。
そして、しばし待つ。
誤って眠ってしまったこともあったっけ。
「空振り」もよくあるケド、今回は出た。
これもイマイチ感覚が麻痺しているのだなぁ。

さて、ここからが大変だ。
まず、ふいに布団が手元に覆い被さってしまうと大変だ。
片手でシビンを持ちながら、
その手で布団を退けるのは至難の技。
さらに中身は液体だ。
激しくは動かせない。
なんとかこの危機を逃れても、
今度はシビンが顔の上空を通過する。
こぼしたら大惨事だ。
そして、最後の難関はカゴヘの着陸。
これに失敗すると、これがホントの「水の泡」。
幸い一度も「水の泡」にはならずに済んだ。
パンツを焦っておろして「ゴムぱっちん」。
これも頂けない代物である。

ある日、カーテンが閉まっている時、
ボクは、迂闊にも、ソレをマジマジと見てしまった。
…シビン…
見れば見るほど不思議なものである。
少なくとも、ＴＶでは見たことがあっても、
実際にじっくり見るのは、自分で出来るようになってからのこと。
横に量の表記（ｍｌ）が書いてある。
置いてもこぼれないように、
口は窄まっていて斜めに付いている。
半透明で、中身は見える。
看護婦さんに「ちょっと濃いねぇ」と言われたのが気になって見ていたのだ。
中身は入っていたけれど、
「今度はどんなもんだろうか？」
と見入っていたわけだ。
突如、カーテンがザバーっと開いた。
「何してんの？」
焦っても隠しどころはなく、
恥ずかしくなって笑った。
看護婦さんにも笑われた。