〜脳卒中の日記風〜
Ｓ君の反乱

昼間、
ボクは、
いつものように車椅子に乗り、
廊下の窓から外を眺めていた。
真下を走る産業道路を見ている。
ダンプカーが通り、バスも通る。
でも、いつも同じ光景だから、ちょっと見飽きた。
そこへ看護婦さんが、走って来た。
廊下の突き当たりのところに何か必要なものがあるようで。
パタパタパタ…
モノを取って戻ってくる。
パタパタパタ…
「廊下は走っちゃダメ！」
ジェスチャーで伝える。
「了解！」だって。
些細なことが楽しい。
病院だからしょうがないんだけどね。

看護婦さんが、Ｓ君を車椅子に乗せてやってきた。
Ｓ君は中学生で、ボクが集中治療室でゲホゲホやっている頃、
隣の病室に、そして今は上の階にいるそうだ。
上の階は、ボクにとっては未知の世界。
どうなっているんだろうかと思っていたものだ。

事件は起こった。
突然、Ｓ君が暴れ出した。
この階（３階）の病室に入りたいようなのだが、
原因はよく分からない。
ものスゴイ暴れようだ。
看護婦さん１人ではどうにもならずに、次々と加勢する。
３階にいた看護婦さんが全員参戦。
思わず「バトルロイヤル」を思い浮かべたりして。
それにしてもＳ君は、相変わらず、スゴイ勢いと叫び声だ。
自身では立ち上がれないようで、車椅子からズリ落ちている。
看護婦さんが直しても、自分からズリ落ちて、みんなを困らせている。
ついに、Ｓ君が泣いてしまった。
やっと落ち着いた…と思ったのも束の間。
また、暴れ始めた。
第２ラウンド開始。

看護婦さんが注射を持ってきた。
でも、この乱闘中に打ったら危なかろう。
観客Ａはそう思う。
しかし、どうにか作戦は成功した模様だ。
Ｓ君は深い眠りについた。
家が近く、急遽、母親が会いに来るそうだ。
「今までこんなことなかったのにね。ホームシックかな？」
中学生じゃぁ無理もない。
ボクもあーなる時があるのかなぁ。

以上、病院の会場からお伝えしました。