〜脳卒中の日記風〜
シャカシャカ

病室で６時過ぎに起きて、
８時前に朝の食事をして、
そして、ちょっと暇な時間となる。
ベットの背中は立てたままでいる。
何もすることがないし、
そもそも窓の外を見ることぐらいのことしか出来ない。
左の窓際に寄せられたテーブルの上には、
携帯ラジオと吸い飲みが載っている。
（吸い飲みって、プラスチック製のキュウスみたいなもの？分かるかな？）
吸い飲みで水分を口から取るようにすると、むせそうでコワイ。
でも、これがある程度出来るようにならないと、
鼻の管を外してもらえないんだよなぁ。

そういえば、後に吸い飲みで、こういう出来事があった。
自分の左側の視野が、特に二重に見えているとは知らず、
ジャブジャブとお茶をテーブルに注いでしまったんだ。
吸い飲みの中に注ぐつもりが、
吸い飲みの表面を濡らしてしまったわけ。
そんなことがあって、しばらくは、
「ココに注いで欲しい」
とお願いするようになってしまったのでした。

朝９時をまわる頃、病院に活気が出てくる。
廊下をパタパタと行き交う病院の人たち。
やがて、病室に担当の看護婦さんたちがやって来て、
患者のひとりひとりが「全身の洗浄」なり「オシモの洗浄」なりをしてもらう。
鼻がニオイを感じなかった時には考えもしなかったが、
嗅覚が戻ってきた今、
何しろ臭い。
いろいろなニオイがブレンドされて、マイルドになっている。
毎日、この状況下で働いている看護婦さんやヘルパーさんはモノスゴク偉い！

同い年の看護婦さんがやって来る。
「もう洗ってもらった？」
「いんや、まだだす。」
そうジェスチャーすると同時に、
「ずいぶん髪が長くなったね！」
と余計かもしれないジェスチャーもする。
喜んでもらえただろうか？
それとも裏目か？
はたまた通じてないのか？
それは、ともかく「オシモ」を洗ってもらうことになったのだが、
その時の言葉がふるっている。
「トミヅカ氏、シャカシャカしなくちゃ！」
ボクが特にかゆいと言ったからだろうけど、
でもねぇ…まぁ、いいや。

思えば、入院したての頃は、
「恥ずかしい」という気持ちが多分にあったけれど、
そのうちそんなことを言っていられなくなってしまって、
今では同い年の女の子に「シャカシャカ」してもらっている。
（もちろん看護婦さんだからであるが…）
でも、自分で出来ないものはしょうがない。
まったく開き直ってしまった。
今に至るこの頃のボクだった。