〜脳卒中の日記風〜
「ゆめ」の始まり

 

’98.9.21
月曜日、会社へ行くため朝起きると頭が痛い。
「風邪かなぁ」「熱でもあるのかなぁ」
と思っては見たものの、
水曜日は祝日だし、今は忙しい時期だし、
とてもとても休めっこないなぁと思い直して、
ボクは家を出る。
いつものように出勤しているつもりだけれど、
何処か違う。
頭が痛い。
目の奥が痛いような気がして、
「メガネがあってないのかなぁ」とも思う。
品川の乗り換えがいつもより少し大変だった。
有楽町の階段も。
そして、ボクは事務所についた。

ボクのロッカーは事務所の扉のすぐ隣。
開けた途端に鏡が落ちた。パリンと割れた。
「こんな時に縁起でもない。」

お昼になっても、お腹が空かない。
お弁当を残すと、みんなが驚く。
「珍しい!」
それくらいのことなのだ。
でも、お箸が持ちにくいのはなぜだ?
歩いても変なのだ。
いったいぜんたいなんなんだ?

午後から外へ。
表参道駅から六本木までを歩く。
地下鉄の階段、よっこらしょ!
ろれつもまわらず困ったもんだ。
「やっぱり熱でもあるんじゃないか?」
こんな時に限って、雨も降る。
バスで帰ろう。
事務所に帰ったところで書類が書けない。
というより文字が書けない。
手に力が入らない。
夜は先輩とパソコンを見に行くつもりだったけど、
家で静かにしていよう。
「明後日は休みだ」そう思い直して、
ボクは家路を急ぐ。

帰るなり「なんか変だ」と言ったと思う。
飲んでもないのに、右足は千鳥足。
食欲もなし。
タクシーで、おっかさんと近くの病院へ。
いろいろ訴えたのに
「様子を見よう」
と突っ返される。
風呂も入らず、ボクは寝る。
これが始まり。すべての始まり。