〜脳卒中の日記風〜
壁を見つめて過ごしていた

１０月に入るとすぐ、ベットが移動した。
窓側から壁側へ…
時刻は、これが正直なところよく分からない。
自分では夕刻と思っていたのだけれど、
実際は昼間に行われていたようだ。
何故そう思っていたのだろう？

しゃっくりは、いつの間にかに止まっていた。
いったん入口の横に動かされて、
それから壁際に動かされた。
動かされる途中で看護婦さんを見たような気がした。
左目にはガーゼがしてあったかな？
（顔面神経麻痺で片目が瞑れなかったんだ）
「ずいぶん患者さんがいるなぁ」
そう思う自分も立派な患者だ。

ラジオが聞こえた、ような気がした。
ナイター中継だと思ったんだ。
それで夕方だと思ったんだ！

壁側にたどり着いた時、
はじめは壁に向かって寝かされたはずだ。
「壁しか見えなくてツマラン」と思ったもの。
壁を見つめて過ごしていた。
壁側のベットは、今まで以上に、
酸素吸入の音がするなぁと思った。
振動も感じられたんだ。
ボクは、これを何故だか、
ヘリコプターの音だとばっかり思っていた。
またある時は、電車やバスの音にも感じていた。

口には相変わらず管をくわえている。
管にテープを巻きつけてから口に固定していた。
詳しいことは分からないんだ。
ただ、ちょっとだけ見えている。
ボク肌があれやすいから、
たぶん、ばってんにしたり、
いろいろにしてテープを貼っていたんだろう。

看護婦さんは言う。
「今は痰を出すのが仕事よ。」
そして、吸引をしていく。
ジュルジュル。
看護婦さんが口の掃除をしてくれたのも憶えている。
舌が一瞬、歯に挟まって痛かったような…。