〜脳卒中の日記風〜
５階へ

‘９８．１２．１０．
５階へ上がる…車椅子にボクと布団と枕を乗せて。
しかし、本当にいいのかなぁ、ボクで？
もっといい人いそうだけれど。

５階は先月の初めに一度来ている。
その時は首もすわっていなかった頃で、
５階は歩ける人もいる別世界だと思っていたのだが、
自分が来てしまった。
いちばん奥の窓側にベット。
でも、すぐにベットへは行かず、
廊下の端っこの机に陣取った。
下の階と同じ様に。
看護婦さんが来て、
「また下よりも景色がいいでしょう？」
黄金色の銀杏。
夕焼けもマンションに映えて鮮やかだ。
夜景がまた綺麗なのだ。
道路を行き交う白い光と赤い光。
これで隣りがおっかさんじゃなければね…
…なんて冗談も言えるようになった。

夜、ベットに横になっていると、
ヘルパーさんが吸引用の手袋を持ってきてくれてのだけれど、
「あぁ、でも、もうこれ要らないね」
と言いつつ持って帰ってしまった。
そう、痰の吸引も卒業したのだ！

５階の空気（雰囲気）は随分と違う。
まず、静かだ。
これが最も違うこと。
患者さんがある程度、安定していることも大きいんだろうね。
ボクも家族や看護婦さんやヘルパーさんたちと、
いろんなおしゃべりが出来る。
家族が来て言う。
「静かで良かったね。ホントに良かったね」
ボクもそう思う。
「昇格だね」と家族以外のみんなもそう言ってくれる。

３階に自分がいる頃は、
そうは思わなかったけれど、
今思えばザワザワしていた。
ナースステーションへの出入りが多いし、
患者さんの容体も（自分も含めて）不安定。
そしてココは救急病院なのだ。
急ぎ担ぎ込まれ、
家族やその他周囲の多くの人が集まる。
３階には不安や心配が渦を巻いている。

一方、５階は安心があり、平静があり、笑いすらある。
同じ病院でもフロアが違うと、こうも違うのだなぁ…