〜脳卒中の日記風〜
ゆめうつつのリハビリ開始

’９８．１０．２３
この日、リハビリは始まった…と、
人のメモ書きには残っている。
日付は自分じゃ覚えていない。
でも、メモが正しければ、入院から丁度１ヶ月を過ぎている。
１ヶ月間ベットの上で生活してしまった。
みんな安静を保つのに苦労しているけれど
（頭の中のことは、普通、見えないだけに、動きたくもなるものだ）、
ボクは「勝手に絶対安静状態」だった。
自力なんて無かった。
リハビリもベット上。
ベットから降りられる程、
というか、頭を動かす力だって無いんだから、
リハビリは病室のベットの上で。
足を引っ張ったり、押し込んだり。
手を引っ張ったり、押し込んだり。
５分ぐらい？
でも、これが痛いのなんの。
動かしていないので、
というより自分の力では動かせないので、
ちょっと動かしてもらうだけで、痛みが走る。
関節が特に痛い。

病室に登場したＰＴ（理学療法士）さんは、誰だったのか？
たぶん「オールバック氏」。
ボクもヘロヘロだから、定かでないことは多いんだけど、
確かそうだ。
その後も非常にお世話になった。
「オールバック氏」…体格のいい男の人で、
髪をオールバックにし、
金色のネックレスをしている。
「倒れても、この人なら支えてくれる！」そんな人。
柔道やったら、似合うんじゃないかなぁ。
リハビリは日曜と木曜は休みだった。
でも、それ以外にも「来ないなぁ」と思ったのは、
時間の感覚がなかったから？
はたまた、眠っていたから？

何だか変なことばっかりだったのだ。
「別の部屋がある夢」は、特によく見たものだ。
頭の上に、自分の横に、別の部屋がある。
（本当は壁なんだけれども）
レントゲンを撮り、
看護婦さんが点滴を差し替える時、
既に別の部屋だった。
看護婦さんも一緒らしいけど、首がそちら側にまわらない。
ボクは壁を見ていて、床の間もあって、掛け軸まで掛けてある。
誰かがボクと看護婦さんの写真を撮る。
そっちを向きたいけど、相変わらず首はまわらない。
頭のナナメ後ろに窓があった。
それは何故か見えるのだ…
夕焼けに染まる山と湖。

自分の両肩の前に、首を挟んで両側に、
山脈があったこともある。
やはりボクは別の部屋にいる。
他の人は畳に布団を敷いて眠っていた。
何か別の病気らしい。
ボクは痰が詰まって息が出来ない。
暗い部屋なんだけど、看護婦さんがボクを見ている。
息が出来ないことを言おうとしても、声は出ない。
ヘリコプターの音が聞こえ、何が何だか分からなくなる。
「もう駄目だ！」と思ったその瞬間、
看護婦さんに顔を拭かれて、
「まこと」に戻った。